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勝手に最遊記

勝手に最遊記

ACCIDENT ―5―

ガッッターンッ―――――悟空が椅子から転がり落ちた・・が、そのまま眠っている。

「・・ダメだなコリャ。部屋へ連れてかねーと。・・・八戒。」
「僕が運ぶんですか?」「三蔵サマが運ぶわけねーし?俺は・・・。」
八戒がクスッと笑って、
「――――男を運ぶのは、僕が最後でしたよね?」そう言って悟空を抱えた。

「そっ。ま、俺が人のオンナに手を出さない主義ってのは知ってるっショ?安心して行って来いって。」
悟浄の言葉に頷いて見せたが、
「・・潤さんもカナリ酔ってますし。桃花も目を離さないで下さいね?」心配げな顔で食堂を後にした。

「よっぱらってないもーんっ・・にゃはははv」
『酔っ払いってなんで酔ってないって言い張るんだ?』悟浄がハイライトを新たに取り出す。

「・・あたし、トイレ・・・。」ゆらり、と、桃花が立ち上がった。
「大丈夫かぁ?桃花。」付いていきたいが・・潤もべろべろだ。

「ん。ダイジョーブ・・。」フラフラと、食堂を出ていく。突き当たってすぐの所がトイレになっている。
『・・・ま。同じ宿の中だしな。』それより・・・「ふにゃふにゃふにゃぁv」酒を手放さない潤。

「・・おら。もう、止めろ?」無理矢理グラスを取り上げる。
「ふんにゃー?あぅ・・ひっどーい!ごじょーっ。」グイグイと悟浄の触覚を引っ張る。
「イテッ!・・コラコラッ。はぁ~・・三蔵。どうにかしてくれよー。」サジを投げた悟浄。

ガタンッ――――唐突に三蔵が立ち上がる。

「・・ん?おい、どーした三蔵・・・「あの、バカ女・・・っ。」悟浄の問いに答えず、歩き出す三蔵。
「・・悟浄、付いていって見よー。」「お?おお。」連れだって付いていく二人。

三蔵に付いていくと――トイレ行く前に宿の出入り口が有るのだが、桃花が見知らぬ男に
連れて行かれそうになっていた。

「・・ちょっと・・止めて・・。」力無い足で踏ん張っても、抵抗にならない。
「いいジャンっ!俺と呑み直そっ?ねっ!」男は強引に桃花の手を取り、宿から出ようとして・・・。

           【ゲシッ】―――――背後から三蔵が、男の背中を蹴った。
勢い良く、前のめりになって転がる男。・・ついでに桃花も(手を取られていた為)倒れる。

「――なっ!?なんだぁ、イキナリッ・・」激高して男が振り返ったが、―ガチャリ― 額に銃口を当てられ、
「・・・一人で呑み直すんだな。」三蔵に威嚇され、スタコラと逃げ出した。

『人間相手にも容赦しないのね・・三蔵てば。』すっかり酔いの醒めた潤。
隣では悟浄がため息を付いている。

潤と悟浄が見ていると、三蔵が足で桃花を突っついたが、反応がないのに舌打ちをして――ガバッ。
『・・・三蔵。ソレって佐○宅急便風荷物運び・・・なんじゃ。』肩に桃花を抱え上げ、歩き出す。

せめて“お姫様抱っこ”にすれば・・・などと思っている潤達へ、
「・・ソイツも寝かせろ。」言い捨てて、部屋へと向かう。

「だな。じゃ、部屋へ帰ろうぜ?」ふらつく潤の手を取り、歩き出す悟浄。
『うー・・・。アレって優しいの?どうなの?』悩みながら部屋へと向かった。

潤が部屋へ帰って来ると、三蔵が出て来た。「・・お休みなさい。」挨拶して部屋へ入ろうとした潤へ、
「――――お前、此処の世界の人間じゃねぇだろう。」三蔵がズバリ言ってのけた。

「っ!?な、なんでっ・・・?」思わず立ち竦む。「・・・オーラーが・・違う。妖怪や式神でもないしな。」
三蔵は潤を見据えて、
「・・別に俺達の敵って訳でも無さそうだ。アイツを面倒にさえ巻き込まなきゃ、どうでも良い。」

クルリと背を向けて、歩き出す三蔵。

『・・びっ・・ビックリした・・。』心臓に悪い。ドッと疲れが出てくる。・・もう、休もう・・。
扉を開け部屋へ入ると、桃花が布団の中で寝息を立てていた。

潤は自分のベッドに腰掛け、大きく息をつく―――――『・・とにかく。一日が終わった・・・。』
ゴソゴソと荷物を探り、パジャマに着替える。シャワーにも入りたいが、桃花を起こしかねない。

お化粧を落として・・・とやってると、「・・・潤、ちゃん・・?」桃花が起き上がった。
「あ・・。ゴメン、桃花ちゃん。起こしちゃった?」桃花はフルフルと頭を振った。
「いいの。・・着替えたいし。・・ふぁ・・。」欠伸をしながら、寝間着替わりのシャツに着替える桃花。

『・・・・あっ。』潤の目に、桃花の背中が映る。――――とても大きな背中の傷。
袈裟懸け・・って言うのかな?右の肩口から、斜め下に切り裂かれた大きな傷跡。白い背中に痛々しい。
―――――背中に傷が有るって言うのは読んで知ってたけど、こんなに・・・。

「あ。ゴメン・・この傷、引いちゃうでしょ?」視線を感じたのか、苦笑しながら潤に向き直る。
「・・桃花ちゃん・・その傷、妖怪に?」「そうだよ。珍しい話じゃないでしょ?」屈託なく笑う。

―ズキンッ 胸が痛む。 『女の子なのに・・・そんな傷。』思わず目を伏せる。

「もう、痛くないから大丈夫なんだよ?」・・痛いとか、そんな問題じゃないでしょ?桃花ちゃん・・。
「暗い顔しないでよぉ。話、変えよっ?あ、潤ちゃんの指輪v・・文字が彫ってあるよね?何て言葉なの?」

「エッ!えっと・・あはははは。」――――恥ずかしい。恥ずかしいよぉ。
「異国の文字か・・読めないからさぁ。」目をキラキラさせて指輪を眺める桃花。

「ねぇねぇ!何て彫ってあるの?意味はっ?」「いっ・・意味?あははは・・・。」潤が真っ赤になってると、

ガッシャアアッンッ―――――・・・窓が破られ、ドタドタと何者かが侵入して来た。

「・・・っ!!?」驚きのあまり声も出ない潤。桃花が庇うように前へ出る。

「我ら玉面公主様の命により、魔天経文・玄奘三蔵の命・そして桃花という女の身柄を奪いに・・・」
口上は其処までだった。
ガウンッガウンッガウン・・・眉間に弾を喰らい、消滅する妖怪―――。
気配を感じ取り、三蔵達が飛び込んで来たのだった。

「・・・殺るぞ。」三蔵の言葉が合図だったかのように、狭い部屋で大乱闘が起こる。

潤は目の前で繰り広げられる戦い―――――『・・殺し合い・・だよね?』 に付いていけない。
凄まじい勢いで、襲いかかって来る妖怪を薙ぎ倒す悟空。
狭い空間のため、錫杖は出さず、肉弾戦で応戦する悟浄。
八戒も気功は使わず、体術のみで妖怪を仕留めていく。
そして三蔵が、銃で確実に息の根を止めている――――『・・・恐いっ!』恐怖のあまり、固く目を瞑る。

「・・潤ちゃん。目は瞑らない方がイイよ?」潤を背中に庇いながら、桃花が囁く。
「桃花ちゃん・・どうして?」だって、こんなの見たくないんだもん・・。

「しっかり見てないとね?仕留め損なった妖怪とか、飛んでくる武器とか、避けられないから。」
唖然とする潤に、
「―――――それが。精一杯、出来ることなの。」優しく微笑みながら言った。


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